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天井クレーンの「性能検査」と「定期自主検査」の違いとは?法的要件と点検義務を徹底解説

製造現場や資材置き場で重量物の運搬に欠かせない「天井クレーン」。
その運用において、生産技術担当者や安全衛生責任者を悩ませるのが、労働安全衛生法に基づく複雑な「点検・検査義務」です。特に「性能検査」と「定期自主検査」は、名称が似ていても法的根拠や実施主体、目的が明確に異なります。

本コラムでは、天井クレーンの検査制度の違いと、コンプライアンス遵守のために事業者がなすべき対応について解説します。

そもそも点検義務はなぜ存在するのか?

クレーンは一歩間違えば重大な労働災害につながる設備です。そのため、労働安全衛生法およびクレーン等安全規則により、厳格な維持管理が義務付けられています。
特に、つり上げ荷重が3トン以上(スタッカークレーン等は1トン以上)のクレーンに関しては、設置後の検査だけでなく、継続的な使用においても法的な「更新」手続きや「健康診断」が必要です。

これらの義務を怠ると、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金(労働安全衛生法第119条・120条)が科されるだけでなく、万が一事故が発生した場合、企業としての社会的信用を失うことになります。

 「性能検査」とは?(クレーンの車検)

性能検査は、クレーン検査証の有効期間(原則2年)を更新するために受ける検査です。自動車で言うところの「車検」にあたります。

対象: つり上げ荷重3トン以上のクレーン

頻度: 原則2年ごと(特定機械等の種類による)

実施主体: 登録性能検査機関(労働基準監督署長が登録した機関)

内容: 構造部分、機械部分、電気部分の摩耗や損傷の有無、および荷重試験(定格荷重の1.27倍相当)など。

この検査に合格しなければ、検査証の有効期間が更新されず、そのクレーンを使用することは法律で禁じられます。

「定期自主検査」とは?(クレーンの定期健診)

定期自主検査は、事業者が自らの責任において行う定期的な点検です。人間ドックや定期健診に近い位置づけですが、これも法的義務です。頻度によって「年次」と「月次」に分かれます。

1 年次定期自主検査(年次点検)

頻度: 1年以内ごとに1回

内容: 荷重試験(定格荷重相当)、構造・機械・電気部分の詳細な異常有無の確認。

記録義務: 結果を記録し、3年間保存しなければなりません。

2 月次定期自主検査(月次点検)

頻度: 1月以内ごとに1回

内容: 過負荷防止装置、ブレーキ、クラッチ、ワイヤーロープの状態確認など。

記録義務: 結果を記録し、3年間保存しなければなりません。

性能検査と定期自主検査の比較まとめ

項目性能検査定期自主検査(年次・月次)
位置づけ検査証の有効期間更新(許可)安全維持のための自己管理(義務)
法的根拠労働安全衛生法 第41条2項労働安全衛生法 第45条
実施者登録性能検査機関事業者(または指定業者)
罰則使用禁止・罰則あり実施・記録保存義務違反で罰則あり

自社で行うべきか、専門業者へ委託すべきか

「定期自主検査」は事業者に実施義務がありますが、社内の保全担当者だけで実施するのはリスクが伴います。

  1. 専門知識の不足: ワイヤーの素線切れやブレーキパッドの摩耗具合など、正確な判断には熟練の経験が必要です。
  2. ウェイト(分銅)の準備: 年次点検では定格荷重をかけた動作試験が必要です。数トン分のウェイトを自社で用意し、安全にハンドリングするのは困難です。
  3. 安全性の確保: 高所作業となるため、墜落防止措置などの安全対策が必須です。

そのため、多くの企業様は建設業許可を持ち、検査資格を有する専門業者へ委託されています。外部のプロに任せることで、第三者視点での客観的な安全証明(エビデンス)を残すことができ、ISOや労働基準監督署の監査対応もスムーズになります。

また、点検で見つかった不具合(異音、摩耗、電気系統の異常)に対して、「そのまま修理・交換工事までワンストップで依頼できるか」も業者選定の重要なポイントです。

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